2023年10月19日、武蔵ヶ丘中学校(熊本県菊陽町)の合唱コンクールに審査員としてお邪魔しました。
武蔵ヶ丘中学校は1年生と3年生が8クラス、2年生が7クラス、計23学級の大きな学校です。
でも、どの学年も自分達で決めた自由曲だけを歌ったので、全学年一緒に合唱コンクールをすることができました。
ただ、感染防止のために、一つの学年は教室でZoomで鑑賞、発表する学年が変わればZoom鑑賞の学年も交替するというスタイルが取られていて、よく考えてあるなあと思いました。
保護者の方も学年によって交替されていました。
私は1年生から3年生まで全クラスの合唱を直接聴くことができて、とてもラッキーでした。
武蔵ヶ丘中学校の学級合唱を聴いて、印象に残ったのは、どの学年もクラスがまとまっていて、穏やかな雰囲気があり、歌声も明るく柔らかかったことです。
パートごとの音程もしっかり取れていて、なかなか思い切って声を出せない今の状況の中でもクラスごとに一生懸命に練習してきたことが伝わってきました。
ただ、クラスによっては、しっかり出して欲しいところのスピード感やエネルギー感がもっと欲しかったなあと思いました。
講評では、合唱を成り立たせている言葉、メロディー、ハーモニーについて、練習を始める時のポイントを簡単にお話しました。
言葉について
まず、その歌にはどんな思いがこもっているのか、伝えたいことは何なのか、それを知ろうとすることが大切です。
ですから、歌詞をしっかり読んでみましょう。
できれば大きな声で。
どの言葉もはっきりと出しましょう。
日本語はア、イ、ウ、エ、オの5つの母音でできていますから、それぞれの口の形を意識して発音しましょう。
また、歌詞を読みながら、「ここは好きだなあ。」とか「自分もこんなことがあったなあ。」などと感じることは、その後、歌の練習をする時にとても役にたちます。
それから、それぞれの言葉の頭の音、例えば「こんにちは」なら「こ」を強く言うと、合唱にした時にとても聴き甲斐のある歌になります。
メロディーについて
言葉を音に乗せることで歌になりますね。
ですから当然、正しい音程で歌う必要があります。
まずは、どのパートの人もメロディー(主旋律)を練習しましょう。
楽譜が苦手な人もいると思いますが、音符を見て歌うととても便利です。
ドレミが読めなくてもいいので、音符が高くなったか低くなったかを見なが歌いましょう。
さらに、どのくらい高くなったか低くなったかを意識して歌うと音程がしっかりしてくると思います。
音階というのは音の階段です。
階段を数段一度に上がる時は、自然にお腹に力が入り、ぴゅんと足を上げます。
音が高くなっているところは階段をぴゅんと上がるようにお腹に力を入れましょうね。
そして、歌には山があります。
その山を意識して歌っていると、自然と強弱がついてきます。
山のてっぺんは高いので、それだけお腹に力を入れて音を出さなければいけませんよね。
「ここはp(ピアノ)で、ここはf(フォルテ)で」と思って歌うのではなく、最初はどこも強く歌いましょう。
そうすると、そのうちに自然と強弱がついてきます。
それから、大きく歌いたい時は、自分の耳に大きく聞こえるようにがんばるのではなく、遠くの一点にその音を飛ばすように歌いましょう。
ボールを投げるのと同じでスピードをつけるのですね。
ハーモニーについて
合唱ですから当然ハーモニーがありますね。
ハーモニーとは「調和」のことですが、音楽の場合、いくつかの音が合わさった時の響きのことを言います。
合唱はソプラノ、アルト、テノール、バスのように複数のパートでできていて、それぞれのパートが違う音程を歌います。
それが重なってハーモニーが生まれるのですね。
時々、自分のパートを正しく歌おうと耳を塞いで他の音が聞こえないようにして歌う姿を見かけますが、あれではせっかくのハーモニーを味わうことができません。
それよりも、他のパートの音の中で自分の音を覚えられたらいいですね。
とは言っても、それがなかなか難しいことですよね。
最初から全部ではなく、どこかの場所で気持ちのいい響きを感じることができたら、そういう場所を少しずつ増やしてみましょう。
そうしたら、どんどん耳が育っていって、周りの音を聴きながらハーモニーを作る力がついてくると思います。
伸ばすところ、特に最後のハーモニーが決まったら、聴いている人の印象がぐっとよくなると思います。
「心を一つに」ってどんなこと?
以上のようなことを講評でお話させていただきました。
もう一つ、「心を一つにする」ということについても。
合唱の練習でも他の時でも、よく聞くことばですよね?
では、具体的にはどういうことなのでしょうか?
私は全員が同じ方を見つめることではないかと思います。
もし、互いが互いを見つめたら、やじるしの方向は逆になりますね。
でも、みんなが同じ目標、同じ方向を見つめたら、最後は一つになります。
そんなことを、これからの中学校生活で覚えていてくれたら嬉しいなと思います。
ありがとうございました!
今年は武蔵ヶ丘中学校の合唱コンクールに参加することができて本当によかったです。
中学生の一生懸命の姿や歌声は感動をもたらします。
それに、先生方の優しさもたくさん感じることができました。
とても残念なことに、今まで一生懸命に練習してきたのに、当日、体調不良でお休みしなければいけなかった生徒もいたようですが、自宅でZoomで合唱コンクールを参観し、自分のクラスを一生懸命に応援したそうです。
「本当は自分もそこで歌っていたのに」と思うと、さぞ悔しかったことでしょうね。
でも、先生方がオンラインでつないでくださっので、同じ時を共有できてよかったなあと思いました。
また、ある学級の発表の時、伴奏が録音かと思ったら、そうではなく、その日、学校に来られなかった伴奏者が自宅からオンラインで伴奏をしたとのこと。
合唱コンクールが終わって、それを聞いてびっくりしました。
私もオンラインレッスンをしているのですが、歌う人は伴奏に合わせて歌いますが伴奏者には歌が遅れてずれて聞こえます。
それで、歌に合わせることはできず、一緒に楽しむことはできません。
その状況で、学級のみんなのために伴奏をした生徒も、本当によくがんばったなあと感動しました。
それができたのも、先生方の優しさと柔軟さのおかげですね。
いろんなことを感じた武蔵ヶ丘中学校の合唱コンクール、ありがとうございました!
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