全国の中学校の合唱コンクールや卒業式で歌われるようになった合唱曲「群青」。
「群青」は東日本大震災を経験し、大事な友と離ればなれになってしまった福島県南相馬市立小高中学校の当時の生徒達と先生によって作られました。
この合唱をする時にどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
私は、表現するためには心と技術どちらも必要だと思います。
今回は、合唱指導をされる先生や実際に歌う中学生達に向けて、「群青」の混声四部合唱をする時のポイントとコツについてお伝えします。
こちらは「あすという日が」と「旅立ちの日に」の合唱指導について書いています。
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合唱曲「群青」について
「群青」は2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた福島県南相馬市立小高(おだか)中学校の平成24年度卒業生と当時の音楽教師、小田美樹先生によって作られました。
平成24年度の卒業生が中学1年生の時に大震災が発生。
津波だけではなく原発事故が起きたのです。
106名いた生徒のうち、2名は津波の犠牲になり、多くの生徒が遠くに避難していきました。
残ったわずか7名の生徒達と小田美樹先生は遠く離れた友のことを思い、この曲が出来上がりました。
詳しくはこちらをご覧ください。
群青(混声四部合唱)の歌い方のポイントとコツをパート別に解説!
それでは、混声四部合唱「群青」の歌い方のポイントをパート別にお話していきます。
ソプラノパートのポイントとコツ
ソプラノパートを大きく分けると、斉唱、主旋律、副旋律(飾り)と3つの部分があります。
斉唱の部分はみんなで歌いますが、まるで一人が歌っているように声と心を揃えて歌いましょう。
出だしの部分が斉唱になっていますね。
ここには強弱記号のmpが付いていますが、だからと言って、小さく歌おうと意識しない方がいいです。
それよりも、前奏を聴きながら、突然、友と離ればなれになった中学生や彼らが見た夕日や海に思いを馳せましょう。
そうすることで思いがいっぱいになり、最初の「ああ」という言葉が内側から出てくるのです。
歌い出しはとても大事ですね。
Bからはソプラノが主旋律になっています。
ここでは2声、3声、4声とハーモニーが広がっていきますから、他のパートを聴きながら、特にバスの声を聴きながら、それに乗っかって歌ってください。
Cは後半から飾りの部分(副旋律)を歌います。
ここは、アルト主旋律でテノールがそれにハーモニーをつけている箇所です。
ですからソプラノはアルトを引き立てるために飾りを添えるような気持ちで歌いましょう。
アルトを聴いて歌うことが大切です。
そして「わすれない-」でクレッシェンドしながらサビのDに突入します。
ここは斉唱→副旋律→主旋律と役割が変化していきます。
Eに入る前の「しったー」と伸ばすところは、ソプラノは同じ音で3拍伸ばしますが、アルトとテノールは3拍目で音が変わりハーモニーを変化させます。
ハーモニーの変化がよく分かるように4拍目の頭までしっかりと伸ばしてください。
Eも同じく斉唱→副旋律→主旋律となっています。
斉唱ではみんなの声を一つに、副旋律では主旋律パートを引き立たせる、主旋律では主人公の自覚を持って歌う、を意識してくださいね。
さあ、そしてクライマックスのHです。
斉唱の部分は思いを込めて、力いっぱい歌いましょう!
ただ、言葉の出だしの「ひび(け)」が16分音符になっています。
慌てないで落ち着いて歌いましょう。
また言葉の頭を意識して強く歌わないと、「ひび」や「う」が聞こえずに「けこの たごえー」となってしまいます。(汗)
そして最後に転調して、明るい響きになります。
ここは希望が満ちているところです。
明るい笑顔で歌いましょう!
みんなで心が盛り上がり、でも最後に静かに斉唱。
最もぐっと来るところですね。
一つひとつの言葉を丁寧に歌いましょう。
特に言葉の頭を意識して出しましょう。
「また あおう ぐんじょうのまちで-」
「ま」、「あ」、「ま」は口を縦に開けて、目で歌うイメージです。
「ぐ」は口を横にすると平べったくなるので、縦に細く開けます。
この曲で一番大事な「ぐんじょう」という言葉を深い響きで、思いを込めて歌ってください。
アルトパートのポイントとコツ
最初の斉唱の部分については、ソプラノパートで書いたように、前奏を聴きながら思いをいっぱいにし、「ああ」を感動を持って歌い出しましょう。
また、この曲は弱起になっていて、言葉の頭が前の小節の終わりから始まります。
言葉の頭をたっぷりと丁寧に歌いましょう。
Bは4声になっています。
他のパートを聴きながら歌いましょう。
CとFの前半は、男声のメロディーにウーで飾りを入れるところです。
メロディーをよく聴いて、優しくウーを入れてあげましょう。
口を横に開くと浅い発音になるので、細く縦にしてお腹から深く発声しましょう。
また最後の2拍をぎりぎりまで伸ばしましょう。
その後は主旋律になります。
mpと書いてありますが、音が低いところなので、そんなに気にしなくても大丈夫です。
そのフレーズの終わりは主旋律をソプラノに受け渡しますが、一緒に次のDに向かってクレッシェンドしていきましょう。
Dは本当に感動的なところですね。
始めは斉唱なので、みんなで力いっぱい歌いましょう。
気持ちが高ぶって速くなりそうですが、一つひとつの言葉を丁寧に、たっぷりと歌ってください。
そしてアルトが主旋律となり、すぐにソプラノに受け渡します。
Dの山は降りずにさらにEの山に登り、Eの終わりで一旦終結させます。
そして間奏の後、男子が歌い始めます。
それを聴きながら飾りのウーを優しく深く入れましょう。
その後、再び主旋律→副旋律→斉唱となりながら転調し、「きえはしない ぐんじょうのきずな」で4部合唱に。
豊かなハーモニーを響かせてください。
そして最後の「また あおう ぐんじょうのまちで」を斉唱で心を揃えて歌いましょう。
テノールパートのポイントとコツ
それでは、テノールパートの歌い方について見ていきましょう。
他のパートの時でも言ったように、最初の斉唱の部分を大切に歌いましょう。
斉唱は簡単なように思いますが、伴奏や周りの声をしっかり聴いて歌わないと揃いません。
次の4部合唱のあと、Cの始めは男声が主人公になります。
男子みんなで優しく丁寧に歌いましょう。
その後は主旋律のアルトパートにハ-モニーをつける役割ですから、この部分はアルトと一緒に練習をしましょう。
Dの後半はソプラノと同じ動きをするので、ソプラノと練習してみましょう。
Dの最後の伸ばす音の3拍目はアルトと一緒にハーモニーを変える大事な役をしています。
一音下げるだけで全体のハーモニーが変わる不思議さと美しさを感じながら丁寧に4拍目の頭まで伸ばしましょう。
Iの前も同じです。
Iの最初はソプラノと一緒に主旋律を歌いますが、フレーズの最後の音だけが違い、テノールは前の音と同じです。
ついソプラノと一緒に上がりそうになるので気をつけてくださいね。
Jもみんなで歌っていて、最初のフレーズの最後だけが5声に分かれています。
またKの前は反対に最後の音だけが上がっています。
そこはがんばって喉で歌うと突出してしまいますので、その前の「きーず」の延長線上(向こう)にあるとイメージして歌ってください。
最後の斉唱は前にも書いたようにとても大事なところ。
この曲の中で最も重要なところかも知れません。
集中して歌い、そのままの気持ちで後奏を聴きましょう。
後奏が終わり指揮者が手を下ろすまで曲は続いています。
バスパートのポイントとコツ
それでは、バスパートのポイントについてです。
中学生の男子の中で低音が楽に出せる人はまだ少ないかも知れません。
でも四部合唱で誰かがバスを歌わないといけないので、バスパートになった人にはがんばって欲しいと思います。
但し、無理に低い声を出そうとすると喉を痛めてしまいますので、軽く歌うようにしてくださいね。
でもこの曲は他のパートと同じところを歌うことが多く、そんなに低い音は出てきませんので安心です。
最初の斉唱に関しては、他のパートのところで言っていますのでお読みください。
Bは四部合唱になります。
四部合唱のところではバスは文字通り基盤になりますので、しっかり歌いましょう。
ほとんどピアノのベースと同じ音ですから、ピアノをよく聴いて歌ってください。
Bの最後が低いA♭になっていて、次、男子みんなで主旋律を歌う始めの音がそのオクターブ上になっています。
ぱっと気分を変えて、額の方に響かせて「またねと」と歌い始めてください。
Dの後半ではアルトとともにメインの動きを歌い始めます。
Eの前の伸ばす音では、アルトとテノールが3拍目で音が変わります。
ハーモニーの変化を感じることができるように、バスパートは4拍目の頭までソプラノとともに音を伸ばしてください。
転調してJになり、斉唱で堂々と歌いますが、「(やくそく)はー」の一音だけが和音になります。
バスパートはしっかり出してみんなを支えてくださいね。
まとめ
今回は、混声四部合唱「群青」の歌い方のポイントをパート別に解説しましたが、どのパートにも共通するものがたくさんありました。
それをまとめておきますので、合唱の時にぜひ意識してください。
①前奏を聴きながら、この歌の世界に思いを向け、出だしの「ああ」を感動を持って歌い出す。
②斉唱は声と心を一つに揃えて集中して歌う。
③今、自分の役割は主旋律なのかハーモニーなのか飾りなのかということを意識して歌う。
③弱起の曲なので、言葉の頭をしっかりと意識して歌う。
④伸ばす音はしっかり伸ばす。特に3拍目にハーモニーの変化がある時は、一つの音を伸ばすパートがしっかり伸ばす。
⑤サビで盛り上がって行く時も丁寧に歌い、テンポが速くならないようにする。
⑥最後の「またあおう ぐんじょうのまちで」の斉唱は最も心を込めて大事に歌う。
⑦後奏を聴きながら、まだ歌の世界に入っておく。ピアノが終わってからフェルマータのついた1小節があることを意識する!余韻!!
それでは、他の真似ではない、皆さんだけの合唱「群青」を創り上げてください。
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